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2012年05月22日(火)更新

中小企業の倒産防止のための出口戦略


中小企業金融円滑化法(以下、金融円滑化法)が施行されてからは、銀行は条件変更を申し込まれた場合、基本的には応じる姿勢のところが多いことから、実行率は約97%と極めて高い数字を維持しています。

昨年9月末時点で条件変更が実施された件数は約228万件あり、1社で複数の借入の条件変更を行うことが多いでしょうし、再変更の場合も多く、金融庁は企業数では30~40万社と見ています。さらに抜本的な事業再生や転廃業等の支援が必要な中小企業は5~6万社あると見込まれています。
 

今年1月に財務省北陸財務局から公表された「地域経済と地域金融機関の現状及び課題について」によると、条件変更を行っている企業の経営改善の状況は、概ね改善14.8%、ほぼ不変64.0%、悪化している21.2%という結果で、改善よりも悪化しているほうが多く、これは他の地域でもあまり変わらないと思われます。
 

金融円滑化法はもう1度の延長というのが現時点では無いことから、政府は金融円滑化法終了と共に中小企業の倒産が急増することを懸念しています。そこで各銀行に対してコンサルティング機能の発揮を求めてきたり、昨年11月には借入金を資本とみなすことができる資本性借入金の明確化措置を表明しました。そして、4月20日には、内閣府・金融庁・中小企業庁から「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」が公表されました。中小企業の経営改善・事業再生の促進を図るため、以下の3つの取り組みを推進していくことになります。
 

1、コンサルティング機能の一層の発揮、
2、企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会の機能及び連携の強化
3、その他経営改善・事業再生支援の環境整備

詳細は以下を参照してください
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2012/0420Enkatsu-encho.htm


さらに金融庁と財務局は5月中旬から6月にかけ、すべての銀行、信用金庫、信用組合に対し出口戦略ヒアリングを開始、条件変更先に対する支援方針や取り組み状況を確認し、抜本的な再生支援が必要だが具体策が乏しい場合には、政府がこれまで打ち出してきた支援策を活用するよう求めるものと見られます。それによって短期間に多くの中小企業再生を行っていく狙いです。

金融円滑化法がスタートしたころは、条件変更を行えば改善あるいは再生できる中小企業も多かったでしょう。しかし現在は、再生あるいは廃業にもっと踏み込むべきであるが、将来性が見えない状態で延命させている融資先企業が多く残っている状況です。
 

銀行側からすると返済条件の変更以外、思い切った支援が取りづらかった中小企業に対し、残りの1年で事業再生が可能な先と継続不可能な先とに見極め、再生あるいは廃業を実現していくことになります。そのため、将来の見通しが全く立たない企業は、廃業という選択肢を視野に入れる必要があるでしょう。しかし、再生の可能性が高い融資先に対しては、債権放棄や資本性借入金の活用といった今までよりも踏み込んだ支援を得られる企業も出てくるでしょう。

 

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