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2012年05月30日(水)更新

銀行員を地場企業へ出向

2012年5月30日 読売新聞web版より一部引用
中銀行員 企業で修業中 地域と関係強化
会社の成長力や事業の収益性を評価する「目利き力」を養成しようと、山梨中央銀行は4月から、若手、中堅の行員10人を地場企業に出向させている。取引先に1年間の修業を受け入れてもらい、5年間で計約50人を派遣する計画。ものづくりやサービスの現場で得た経験を、取引先のビジネスチャンス、地域経済の活性化に結び付ける狙いだ。
 

中銀では昨年、円高の進行などで県内からの企業流出が相次ぐ事態を想定し、地域に根ざした地場企業の役割が重要になると分析。地方銀行として支援強化を図るには、「さらに一歩踏み込んだ対応が必要」として今回の事業に踏み切った。
引用ここまで


銀行員時代の話ですが、私が融資課にいたときは人手不足で融資先企業を訪問することがあまりできませんでした。そのため、企業をよく理解しないで稟議書を作成することがよくありました。
その後、渉外担当者になってからは、社長との面談や取扱商品を見ることも増え、事務所や工場を見ることもできたので、稟議書の作成もスムーズになりました。そして、その企業の問題点や改善すべき点などもわかるようになりました。


しかし、それだけで企業のすべてが分かるわけではありません。そこからさらに踏み込んで、行員を企業に1年間派遣して目利き力を高めるために、地場企業で修業させるこの取り組み、行員の能力向上と地域経済の活性化のためにも良い取り組みだと思います。


山梨中央銀行よりも前に、似たような取り組みは京都信用金庫ではすでに行われていて、約1か月間と短いですが17年度より実施されています。当初受け入れる側の企業は、信金職員が来るということで警戒心もあったようですが、自社の事業内容を詳しく理解してもらえる良い機会と好評のようです。山梨中央銀行のほうも、地元企業はおおむね歓迎しています。


ライバル行よりも企業と親密になれますし、目利き能力向上によって融資以外での企業支援も期待できますから、規模の小さなところは人的に難しい面もありますが、他行でもこのような取り組みは増えてくるような気がします。

2012年05月29日(火)更新

大東銀行が初の資本性借入金(DDS)を実施

5月11日、大東銀行(本店:福島県郡山市)は、地元の被災企業に対して資本性借入金(DDS)を実施したと公表しました。金融庁は資本性借入金の積極的な活用を促進するために、2011年11月22日に金融検査マニュアルの運用明確化措置を公表しましたが、同行では初めての実施となります。福島県内の建設関連業者1社に対して資本性借入金を実施し、借入金の一部返済を10年間猶予して財務改善を図り経営を支援します。
 

資本性借入金とは、決算書上では借入金は負債の部に計上されますが、銀行が企業の財務状況等を判断するにあたっては、負債ではなく資本とみなすことができる借入金のことをいいます。


昨年11月に、金融庁は資本性借入金の積極的な活用を促進するため、金融検査マニュアルの運用明確化が行われたわけですが、
資本性借入のメリットとしては
・資金繰りの改善
・新規融資が受けやすくなる

主にこの2つがメリットとなります。今回の福島県の建設関連業者は、今回新たな資金調達ができたのかは不明ですが、借入金の一部を10年間猶予するとのことですから、資金繰り改善のメリットは大きいと思います。

資本性借入金の詳細はこちらを参照してください。http://www.mn-con.jp/category/1568846.html


このように資本性借入金は中小企業にとって良い制度ではありますが、現状では残念ながらあまり利用されていません。大手銀行を中心に実績はあるでしょうが、中小の銀行となるとまだあまり経験をしていない制度であることから、銀行ごとに対応に差があります。それに、この制度はすべての中小企業にというわけにはいきません。営業利益やキャッシュフローが安定して確保できる企業が対象となるでしょう。


 

2012年05月28日(月)更新

大阪府と大阪市の信用保証協会が統合

大阪府と大阪市は、それぞれが出資する信用保証協会を統合する方針で固まったと5月上旬に報道されました。当初、合併の時期は2015年度を目標としていましたが、その後、2013年度中と前倒しされることになりました。
 

組織のスリム化による経費削減が目的で、13年度末までに大阪府中小企業信用保証協会が大阪市信用保証協会を吸収合併します。11年3月末で利用企業数は、府協会が10万社(うち大阪市内は3万9千社)、市協会が3万6千社、大阪市内では1万1千社が重複しています。


信用保証協会は各都道府県に1協会ずつ存在するというイメージがありますが、大阪市、横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市には市の保証協会があります。


統合されることで、大阪市保証協会を利用している中小企業の中には、今後の資金繰りに悪影響が出ないかという不安もあるでしょうが、私はそれほど大きな影響はないと思われます。全国の信用保証協会はオンラインでつながっており、他の信用保証協会でどれだけ保証枠を使っているかわかりますし、保証枠は合算して決められるからです。ただ、市協会側の方が審査に甘い部分もあるという指摘がありますので、そうだとしたら府側に統合されてから多少審査が厳しくなったと感じることはあるかもしれません。

 

2012年05月23日(水)更新

新入職員の安全運転講習

先月4月12日に京都市東山区で自動車の暴走事故が発生してから、京都府亀岡市、千葉県館山市、愛知県岡崎市と立て続けに発生しました。銀行員は自動車やバイクをよく利用することから、安全運転を徹底するよう指示している銀行もあるでしょう。


私は自動車やバイクというものに全く興味がないのですが、若い人を中心に自動車やバイクには興味がないという人が多いように感じます。収入的に所有したり維持することが難しい人が増えていることもあるでしょうし、趣味の多様化等様々な要因があるのでしょう。そのため、運転免許証は持っているけど、私みたいに身分証明書になっているペーパードライバーが私の周りの若い人には多いです。


銀行なら外で営業するときは自動車やバイクを使うことは当然あり得るわけですが、そういう若者が多いためか運転が苦手な新入行員が増えてきているようです。免許を取ってから運転をしたことがない人もいて、営業ノルマよりも行員が事故を起こさず帰ってくるか心配なんていう話も聞きます。


ある信用金庫ではそんな若い職員のために、4月下旬に安全運転講習を行いました。来年度以降も新人研修で行う予定だそうです。他でもこういう研修が行われそうですね。


 

2012年05月22日(火)更新

中小企業の倒産防止のための出口戦略


中小企業金融円滑化法(以下、金融円滑化法)が施行されてからは、銀行は条件変更を申し込まれた場合、基本的には応じる姿勢のところが多いことから、実行率は約97%と極めて高い数字を維持しています。

昨年9月末時点で条件変更が実施された件数は約228万件あり、1社で複数の借入の条件変更を行うことが多いでしょうし、再変更の場合も多く、金融庁は企業数では30~40万社と見ています。さらに抜本的な事業再生や転廃業等の支援が必要な中小企業は5~6万社あると見込まれています。
 

今年1月に財務省北陸財務局から公表された「地域経済と地域金融機関の現状及び課題について」によると、条件変更を行っている企業の経営改善の状況は、概ね改善14.8%、ほぼ不変64.0%、悪化している21.2%という結果で、改善よりも悪化しているほうが多く、これは他の地域でもあまり変わらないと思われます。
 

金融円滑化法はもう1度の延長というのが現時点では無いことから、政府は金融円滑化法終了と共に中小企業の倒産が急増することを懸念しています。そこで各銀行に対してコンサルティング機能の発揮を求めてきたり、昨年11月には借入金を資本とみなすことができる資本性借入金の明確化措置を表明しました。そして、4月20日には、内閣府・金融庁・中小企業庁から「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」が公表されました。中小企業の経営改善・事業再生の促進を図るため、以下の3つの取り組みを推進していくことになります。
 

1、コンサルティング機能の一層の発揮、
2、企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会の機能及び連携の強化
3、その他経営改善・事業再生支援の環境整備

詳細は以下を参照してください
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2012/0420Enkatsu-encho.htm


さらに金融庁と財務局は5月中旬から6月にかけ、すべての銀行、信用金庫、信用組合に対し出口戦略ヒアリングを開始、条件変更先に対する支援方針や取り組み状況を確認し、抜本的な再生支援が必要だが具体策が乏しい場合には、政府がこれまで打ち出してきた支援策を活用するよう求めるものと見られます。それによって短期間に多くの中小企業再生を行っていく狙いです。

金融円滑化法がスタートしたころは、条件変更を行えば改善あるいは再生できる中小企業も多かったでしょう。しかし現在は、再生あるいは廃業にもっと踏み込むべきであるが、将来性が見えない状態で延命させている融資先企業が多く残っている状況です。
 

銀行側からすると返済条件の変更以外、思い切った支援が取りづらかった中小企業に対し、残りの1年で事業再生が可能な先と継続不可能な先とに見極め、再生あるいは廃業を実現していくことになります。そのため、将来の見通しが全く立たない企業は、廃業という選択肢を視野に入れる必要があるでしょう。しかし、再生の可能性が高い融資先に対しては、債権放棄や資本性借入金の活用といった今までよりも踏み込んだ支援を得られる企業も出てくるでしょう。

 

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